この春先に読んでいた本数冊の中に、樫出勇氏著の「
B29撃墜記」(光人社刊)という戦記ドキュメントがありました。これは太平洋戦争末期、中国大陸から梯団(ていだん)を為し、幾重にも折り重なるように北九州や近畿工業地帯を空襲せんと飛来した“超空の要塞=B29戦略爆撃機”の大編隊を、二式複座戦闘機 キ45改「
屠龍(とりゅう)」を駆り迎え撃った、飛行第四戦隊・本土防空隊の熾烈にして勇猛果敢、そして悲壮この上ない戦いの日々を克明に綴った空戦記なのでした。
実話の戦記本ですから、迂闊に「面白かった」と書くと、あまりに不敬で不謹慎極まりない話になってしまうのですけど、ついつい夜が更けたもの忘れて読み耽ってしまいました。
この本の影響で、それまであまり関心のなかった「
二式複座戦闘機 キ45改「屠龍(とりゅう)」という機体に単純に興味が湧いたわけです。この実機が実際運用された背景や経緯を簡単に書き留めてみますと、原型となった「キ45」はその当時(昭和十三年当時)の世界各国で開発されていた「双発複座戦闘機」に刺激されて、陸軍部内で「爆撃機援護用の長距離戦闘機」として使うべく、川崎航空機に命じた開発した戦闘機だったそうですね。「キ45」は結果、
主翼部のナセルストール(
注.)の問題やエンジンの不調・格闘性能の能力不備から、採用には至らなかったそうですが、本来の援護支援任務から戦闘爆撃機的役割に変換を図った「キ45改」は、「
二式複座戦闘機 屠龍」としてようなく採用に至った経緯を持つそうです。
ただその頃は航続距離の長い「隼」などが重宝されていたので、もう役割的にはかなり中途半端な存在になり、船団護衛や今回のような爆撃機の邀撃(ようげき)任務に宛がわれたんだそうです。
(
注.飛行姿勢の変化等の条件により、エンジンカウリング(カバー)からナセル(エンジン取り付け部)に至る空気の流れが乱れて主翼上面の空気を剥離させ、揚力を奪い墜落につながる現象。 )
決して大きくはない機体に、機首に20mm機関砲二門、あるいは機体下部に20mm機関砲一門、機体上部に上向き20mm機関砲二門、後席に7.7mm旋回機関銃一門を詰め込んだ、その吸血の為の巧緻さは、機体に描かれた毒々しい迷彩と相まって「意地の悪い猛毒蛇」の髣髴とさせますが、更に改良を加えた本機「丙型」は、翼幅43mにも及ぶ巨人機「B29」の翼の付け根をめがけ、乾坤一擲の一撃を加えんが為に、手動装填の
37mm戦車砲改造砲(!)を搭載しておったそうです。
この一発を外すとニ撃目は容易に加えられない=巨人機の速度には追いつけなかったそうですし、防弾の無い翼タンクにひとたび被弾すると「屠龍」は「ライター」と渾名されるほど大変火の回りやすい脆弱な機体だったそうですから、相当数の被害も被った。自爆や体当たり攻撃なども数知れず。そんな中で生き残れた方々というのは、大変運の強い方、あるいは相当の技量の持ち主だったんでしょうね。樫出勇氏は夜間地上の照空灯部隊と連携し、死角の無い“超空の要塞”「B29」を、実に
26機も撃墜し生還を果たした陸軍航空・本土防空のエースだったわけです。
しかしながら「〜賛美」を助長するつもりは毛頭ありません。(汗々)
本文中にもありましたが、この当時、不惜身命の決意を秘め祖国防空の任にあたった「屠龍部隊」隊員は、自らの闘志が漲るが余り“自己犠牲の際には必ず敵機も道連れ”という観念に基づいて任務を全うし、良しにつけ悪きにつけ、そのような観念を持つ事が、国を挙げて“名誉”とか“美徳”とされ讃えられた時代のお話ですから、“世界平和”とか“国際協調”、あるいは“人命尊重”を「尊し」と教育された現代人や、教育されたにも拘らず風化し忘れかけた若者の感覚では、ついに理解出来ない行為かもしれません。
同じ国で起きた悲劇でありながら、現在の中東情勢か何かの様に、昭和初期をまるで遠い異国の出来事のように、まったく別の民族として傍観している...う〜ん。焦点が今ひとつもふたつも合わない感覚、あるいは感想をお持ちになられる方もおいでかもしれません。
さて、勇敢な本の話はここまでとして、別に勇敢では無いワタクシは極めて平和的に「二式複座戦闘機 キ45改「
屠龍(とりゅう)NICK」の模型を作ってみようと思い立ちました。キットは日本模型(ニチモ)の1/48です。古いキットですのでもう手に入らないだろう...と思っとりましたが、模型屋さんの御尽力もあってか?意外と容易く安価で手に入りました。
...ですが、流石ニチモだけあって“
ニッチモさっちもいかない”というか?「
おのれ!Nick機(憎き)
ヤツっ!」とでもいいますか?盛んに駄じゃれを飛ばしたくなるくらい、現在のTAMIYA/HASEGAWA製品の取り扱いに慣れていると、かなり組み立て辛いキットだと思いました。
枕頭鋲痕まで再現してある繊細な凹モールドは、成型時金型に負担をかけないようにか?かなり柔らかいプラスチックの素材を使用しています。案の定、反っているので「無理苦理合わせよう」と力をかけると簡単に「パキッ!」と逝きます。ですから、まるでいかがわしいおやぢのエゲつない風呂遊びの様に一緒にお風呂に入って(笑)お湯の中でゆっくりマ〜タリと反りを修正します。また接着後の変形を危惧して、桁(ケタ)をかませようかと思っとります。
また機内や主脚・車輪格納室・外方脚扉裏には、肋材等のモールドがまったくありません。昔のキットですから肉が不均一に厚い箇所もありますね。これをリュータで削り込み、肋材等はある程度再現(デッチ・UPですが)しようかと企んでいます。
「凄いねー。“上級者向け”のキットをついに始めちゃったのだねー。」と、師匠筋にあたる先輩モデラーにからかわれて、なんとなくバツの悪いまっぴらなのでありますが、一体本当に完成するのでしょうか?(笑) 完成は例によって未明となると思いますが、ここしばらく孤軍奮闘、頑張ってみたいと思います。