
映画「ヒストリー・オブ・バイオレンス」。
このところ、そこかしこでこの映画の話題にかち当たる。正直デイヴィッド・クローネンバーグ監督も、主演のヴィゴ・モーテンセンもあまり御贔屓ではなかったが、評判に負け、つい観てみることにした。
なんでも原作は「ジャッジ・ドレッド」の原作者ジョン・ワグナー&ヴィンス・ロックがタッグを組んだグラフィック・ノベル(サスペンス・ミステリー)だそうでして、本作はその映画化との事。
「異常気象も10年続くと恒常化とする」例えあり。「暴力」とは「日常の中の非日常」。人間の本能に直に結びついているだけに、避けて眼を背けてばかりもいられない問題で、通常は理性・学習・教育等でこういった感情を抑制する事を要求される。ところが昨今は、簡単に人が死んだり、殺されたりと何かと物騒な御時世だ。眼が慣れてしまい、感覚が鈍化し、単なる“朝刊に掲載されるだけ”の一風景として恒常化してしまう事ほど恐ろしいものはない。
一時はそのグロテスクな映像描写で知られた映像作家クローネンバーグ監督の手腕は、今回その人間の心の奥底に仕舞い込んだ「暴力衝動」といったものの映像化に特化した感がある。まるでスプラッター映画の展開のようでした。
平凡で善良で温和な男が、心無い暴力に遭遇し、飛び散る血糊や肉片を全身に浴び、静かに壊れ始める。その時、彼の愛するが故に、守ろうとした妻や子供たち=家庭のカタチはどのように歪んでしまうのだろうか?
英雄がいない時代は不幸だが、
英雄を必要とする時代は、もっと不幸だ。
ベルトルト・ブレヒト「ガリレオ・ガリレイの生涯」

タイトルに違わず、平凡で物静かで家庭を愛する男〈トム〉が、様々な“暴力”に遭遇していく。軽食店を生業としていた彼の店に、残忍な強盗2人組みが押し込む。銃で脅される客を見かねて、彼は咄嗟の判断で銃を奪い取り、相手を射殺する。正当防衛が立証され、マスコミにも取り上げられ、一躍「時の人」、「街のヒーロー」となる彼だが、彼や家族の元に「彼の過去を知っている。彼は残忍な手口で知られたギャング、ジョーイ・キューザックだ!」という薄気味の悪い男達が現れ出し、彼の周囲で様々な圧力をかけ出す。
物静かな彼は、果たして本当に善良な小市民なのだろうか?
ふと思い出したのは、サム・ペキンパー監督の「わらの犬」。
他人と争いあう術を何ら知らぬまま、亭主(一家の主)になってしまった都会出身の非力でモヤシな物理学者が、古い慣習や体質を重んじる頑迷な土地で、野蛮な村人の横暴や暴力から匿った男...ひいては妻や家を守りぬくといった暴力映画だったが、〈トム〉を演じるヴィゴ・モーテンセンは血飛沫を被りながら、極めてクールな表情で淡々と静かな狂気に嵌り込んでいくのが怖い。それが既存の多重人格モノや記憶喪失モノでは決してないから、尚一層怖いのだ。
ついに夫を理解できずに苛立ち始めた妻(貧乳の割には露出度が高く、やたらと脱ぎたがりのマリア・ベロ。今回はヘア・ヌードまで披露 )との殴り合いの夫婦喧嘩が、そのまま“組ず解れず”の壮烈な濡れ場に発展したり、事あるごとに級友に苛められる長男が苛めっ子をボコボコにタコ殴りにしたりと、家族の中においてもそこかしこに“生傷の絶えない暴力”は満ち溢れている。その妻と子供を守り、忌まわしき過去を清算しに出かけるトム。しかしながら哀しい事に、守ろうとするが故の膺懲(ようちょう)もこれまた暴力的側面をおのずと有しているのだ。
エド・ハリス、ウイリアム・ハートといった演技派の大御所二人が、対するギャング役を好演している。出番はやたら少ないながらも、強烈にダークな印象を画面に焼き付け残している。それ故にヴィゴ・モーテンセンの劇中描かれる事のない残忍な過去を否が応でも観客に想像させてしまう手法はなかなかなもの。
過去の確執を一切合財、全て清算し、ひっそりと家庭に戻る〈トム〉。食卓で祈りを捧げつつ、無言で彼を受け入れる家族達。「彼等はこの後どうなってしまうのだろう?」静かながらも、妙に心に染み入り、余韻の残るエンディング。
ただ惜しむらくは、主人公の人物設定が、少々奇異な印象を受ける。全編通してモーテンセン演じるキャラクター〈トム〉の達観したようなクールさも多少影を落としていると思う。「許されざる者」の主人公〈マーニー〉でも同じ印象を受けたが、人間は受ける影響が外的であれ内的であれ、そうは易々とは更生できない生き物である。忌まわしき過去の片鱗が何ら窺い知れないので、中途で突拍子のないどんでん返しを喰らう羽目になる。それを只でさえ“喜怒哀楽の表情の乏しく、感情移入がしづらい”モーテンセンが演じなくても良かったような気がするしな...。
また劇中の一家庭内に留まらず、「アメリカ」という社会の中で、組織犯罪のような社会的病巣や、ここで描かれているような「暴力行為」が「どういう受け取られ方をしているのか」までをも、断片的にでももう少し描いて問題提起してくれると、世間一般の評価も高かったのではなかろうかと愚考する。如何なものであろうか...?





















見たかったよー。
でもこっちじゃやらなかったんですよ。
中身が凄いようなので体調の良い時に見ます。はい。
ども。こちらヒステリーでバイオレントなまっぴらでござます。m(_"_)m
「ロード・オブ・ザ・リング」の挫折したワタクシですから、ビゴ様には特別思い入れがありませんでしたので、ついつい辛口の感想になりました。どーもスミマソ(ペコリ)
ワタクシ的には、今回仇役を演じたエド・ハリスの「クリープショー」ぐらいの若い頃や、「チャンプ」の頃のジョン・ボイド辺りに〈トム〉の役を演じて貰いたかったかなぁ....?
ウォーケンやピーター・ウェラー、ジェームズ・ウッズ、まあビゴ様もそうなんですが、眉毛の薄い(無い、あるいは金髪で目立たない)男優って昔からどうも感情移入しづらいんです。役柄的に“冷淡”とか“神経質”ってイメージが、先についてまわっちゃって。
クローネンバーグ監督作品ですから、映画的には確かにブチャッ!ビチャッ!って描写はありますが、全編通してはそんなに極端激しくはないかと...。
(マリベロとHのシーンが結構激しいので、案外コチラの方がびっくりするんぢゃあないかと)
まあ、でも女性は確かに辛いかもしれませんね。「指輪」のビゴ様の勇姿の片鱗を期待すると、ちょっとなあ...。(悩