「
ゲッタウエイ The Getaway」。
直訳すると「あっちへ行け!」という意味ですが、これでは意味合いが死んでしまいます。要は「高飛び」とか「事を上手く運ぶ」とか、「してやったり!」という意味合いを含むんだそうです。
「COOLの帝王」スティーブ・マックイーンと暴力の鬼才サム・ペキンパー監督の最強タッグ。両人すでに故人となりましたが、彼らの晩年の最高傑作と目されております。すでにTV放映などで御覧になられた方も多いのではないでしょうか?
世紀のドル箱スターが、この作品では銀行襲撃のプロフェッショナルを好演。無益な殺生を避けるために周到な銀行襲撃計画をめぐらすも、心無い仲間との確執が元で、計画は大きく破綻。
心のすれ違いを繰り返す最愛の女房と共に、せしめた50万ドルをまんまと抱え、群がる悪党や追っ手を蹴散らしながら、果たして無事越境し、メキシコに高飛び出来るのか?といった概要。
原作ジム・トンプソンのあれだけつまらないクソ・サスペンス小説を、手に汗握るヴァイオレンス・アクション映画に仕上げたサム・キンパーの力量と、脚色を担当したペキンパー傘下のウォルター・ヒル(「48時間」、「ストリート・オブ・ザ・ファイアー」)の、才覚はお見事の一言に尽きます。
「行動する男の美学」と謳われたマックイーン自らが、自動車をぶっ飛ばし、Colt'45やポンプ・リピーター式ショット・ガンを街中でズガズガ撃ちまくるといったスピードとアクションのど派手さ。その銃撃シーンと射殺・破壊シーンの凄まじさ。スローモーションやクローズ・アップを多用したその壮烈さに眼を奪われながらも、忘れていけないのは、
「アメリカという悩み多き社会が、ヴァイオレンス(暴力)といったものをどう捉え、認識しているのか?」という描写が、細かいカットワークの中に、常に描かれているところ。例えばほら!
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ショット・ガンが「ドカーン!」と炸裂する。
銃声につられて、子供が顔を出す。
パトロール・カーに激しい弾着シーン。
飛び出した子供の袖を、近くにいた親が慌てて引き戻す。
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...といった、ほんのコンマ1秒ほどの、つい見逃してしまいそうな細かい描写。ここがペキンパー・タッチを模倣し、単に暴力の描写ばかり追求しがちな昨今の監督と、本家「ヴァイオレンスの鬼才」との大きな相違点でしょう。
ボク的に気に入っている役者は、ドク・マッコイ(マックイーン)と対極を成すキャラクター、悪漢《ルディ》を演じる個性派俳優アル・レッティエリでしてね。
http://us.imdb.com/name/nm0504803/彼は見た目の強烈な個性とは裏腹に、実に繊細な俳優だったそうでして、特に招かれて撮影に望んだところ、ペキンパーは事あるごとに、
「アル!今のは良かったぞ!」、「最高の演技だ!」と絶賛するんだそうです。レッティエリは頸を傾げながらも演技していたそうですが、実は面白くなかったのが、主演にして《目立ちたがり屋》のマックイーンだったそうでして..。(笑
この映画でマックイーンが演じる《ドグ・マッコイ》。
お気づきかもしれませんが、今までになく「憤り」や「苛立ち」、「焦り」といったものが描かれています。本来のマックイーンの持つクールなイメージとは大きく異なりますね。
実はアルはマックイーンの潜在能力を引き出す為の、出汁(だし)にされてしまったんです。完全なペキンパーの戦略だったんですね。
おかげで撮影現場では別の意味での緊張が走り、アルはそれこそもうマックイーンの逆鱗に触れないように、おっかなびっくり戦々恐々と演技していたそうです。
可哀想に「ゴッド・ファーザー」で《ソロッツオ》を演じた名バイプレーヤーは、撮影数年後に心臓発作で他界してしまったそうです。(1975年没)
また「世紀のラブ・ロマンス」と噂されたマックイーンとアリ・マックグロウの色恋騒動。結局は離婚してしまいましたが...。
この当時(撮影1971年頃)、マックグロウは、パラマウント・ピクチャーズお抱えのプロデューサー、ロバート・エヴァンズの(まだ)奥様だったわけです。マックイーンとマックグロウが銀幕上で演技か?本気か?睦みあえば睦みあうほど、昔の旦那様の立場は、劇中《ルディ》と放埓な妻《フラン(サリー・ストルーザース)》との淫らなやり取りに苦しみ、首を吊る獣医《ハロルド(ジャック・ドットソン)》の姿と、大きく被ってしまうカタチになってしまうわけ。映画会社に恨みを抱き、絶えず衝突を繰り返すペキンパーは、どうも狙っていた気配が濃厚なんです。(笑)
結局、結婚の後、破局してしまう事になる2人の関係ですが、離婚のきっかけになったのは、マックグロウの流産と女優業復帰。オファーされたその作品が、サム・ペキンパー監督作品「コンボイ Convoy」でしたから、
「サム・ペキンパー」って、毒舌癖も含め、
どこまでも厭味で意地悪な監督だったんですねー。(笑
音楽はクインシー・ジョーンズが担当しましたが、当初ペキンパー作品お抱えのジェリー・フィールディングが担当する予定でした。これは新妻アリのJAZZ好きが嵩じて、このフィールディング降板にはマックイーンの意向が大きく働いた事によるものだそうです。サウンド・トラックは存在し、ボクも聴いた事がありますが、音質が低くてあまりいい出来映えの物ではありませんでした。
シドニー・ポワチエ、バーブラ・ストライサンド、ポール・ニューマンらと設立した新会社FAP〈ファースト・アーチスツ・プロダクション〉第一回公開作品。プロテスタント文化圏の感覚的には「逃げ切る事は決して贖罪には繋がらず」、特に州法の定めるところの一部米国国内。勧善懲悪を好むラテン系気質に配慮した「スペイン版」など、ラスト・シーンに大幅な変更が加えられ、「犯罪者の逃亡を良しとせず、マッコイ夫婦が射殺される」.verが存在する.....らしいんですが、VHS・PAL等ビデオやDVDなどマーケットには出回っている可能性が乏しくて、(アメリカに住む知人には探して貰ったんですが)、今のところその存在は個人レベルでは確認出来ずもっか不明...。
日本国内リバイバル時、「この夫婦はこれより××日後、メキシコの何某で逮捕された」という字幕テロップが出た.verが公開されたという噂...ではなく話があり、実際ボクの友人は「劇場でこれを観た!」と頑なに言い張っておりましたが、真相はcross the border。